イノベーションを加速する共創
CEO×CTOクロストーク
会社設立前から、同じような興味を持って研究していたことで知り合った、Nature Architectsの創業メンバー。何を目指しているのか。他ではできないどのようなことを、ここでは成し得るのか。そして、だからこそこんなエンジニアと一緒に働きたいという思いを語ります。
PROFILE

●代表取締役CEO
須藤 海
東北大学理学部卒業後、東京大学大学院総合文化研究科にて、折紙工学の研究により修士号取得。
折紙技術を用いたプロダクト設計支援ツール「Crane」を谷道と共に未踏事業にて開発。
修士課程修了後、Nature Architectsに取締役Chief Research Officerとして参画。2024年度ソフトウェアジャパンアワード受賞。Nature Architectsの研究開発をリードすると共に、顧客の前面に立ちプロジェクトの推進から新規案件の獲得まで幅広く貢献。

●取締役CTO
谷道 鼓太朗
2016年東京大学工学部卒業後、同年東京大学大学院学際情報学府に入学し、デザインエンジニアリングの研究に従事し、国内外多くの展示にて自身の研究成果を出展。在学中よりNature Architectsに創業メンバーとして従事。独立行政法人情報処理推進機構より未踏スーパークリエータ認定。2024年度ソフトウェアジャパンアワードを須藤と共に受賞。
「これどうなってるの?」が始まりだった

それぞれのバックグラウンドとメタマテリアルとの出会いを教えてください。
谷道:私は学部時代、建築を専攻していました。コンピュータで形を作っても、あくまでも画面上の話でしたが、修士の研究室で3Dプリンタを使っていろいろ物を作ることを繰り返していたら、「お、なんか変形をコントロールできるぞ」という気づきがあって。須藤さんと初めて会ったときも、できたばかりの面白いサンプルを持って行ってそれについて話が盛り上がりました。
須藤:私はもともと数学科で、「定理、証明、定理、証明…」という世界でしたから、実際に物を作って応用している人に対してどこか憧れのような感情がありました。谷道さんと初めて会ってそのサンプルを見せてもらったときも、「何これ気持ちわるっ笑、どうなってるの?」と畏敬の念を込めて口にしたことを覚えています。その後、経済産業省が主催するIT人材の発掘・育成のためのプロジェクト「未踏事業」に谷道さんと一緒に応募し、折紙工学を用いたプロダクト設計支援ツール「Crane」で採択されたことは一つの転機です。そして、Nature Architects創業者である大嶋さんを中心に、サークル活動のような感じで毎週面白い構造を持ち寄って見せ合うといったことをやってきたところから今があります。
技術そのものを楽しむことが、価値提供につながる

今は名だたる製造業の大手企業から設計の協力を依頼されますが、なぜ、どのように依頼をされるのでしょうか。
谷道:確かに、私たちのクライアントは日本の製造業を代表する大手のメーカーばかりです。当然、クライアントの社内には非常に優秀なエンジニアが多くいらっしゃいます。ただ、大企業の社内では「いかに設計を変えないか」が重視されることがよくあります。これまで長年続けてきたやり方を変えることは様々な点でリスクがありますから。それでもこの激しい市場環境下では、「社内だけでは新しいものが出せない」「このままだと本当にまずい」というところまで来ているのです。そこで、新しいやり方を取り入れてどうしてもブレイクスルーしたいという強い意志を持った企業から、重要な設計について協力依頼を頂いています。
須藤:製造業が100年に1度ともいえる変革期にいることは間違いありません。世界中の新興メーカーがかなりアグレッシブなことをやってきます。このままでは太刀打ちできず、勢力図が大きく変わってしまう。低価格化、軽量化、エネルギー効率、音や振動などのUXの改善といった市場からの要求は、物理的な実現可能性を無視してどんどん高度化していきますから。それはときに不連続ですらあり、既存設計の改善で到達できるレベルをはるかに超えてしまっているので、全く新しいアプローチで根本から解決する必要があるのです。

その課題にチャレンジすることの面白さはどこにありますか。
谷道:「技術的に攻めた提案」が価値に直結するということです。エンジニアにとってそれは意外と稀有なことだと思うのです。本当は「こう設計したらこうなる」「形を変えたら機能をこうコントロールできた」という興奮が、やりがいの原点にあるエンジニアは多いはずです。技術的なアウトプットがどれだけ具体的だとしても、エンジニアにとっての根源的な興味やモチベーションといった抽象的なものこそ大切です。そして、自分の技術を通じて産業界にインパクトを与えることができ、それがしっかりビジネスになっている手ごたえも同様です。「攻めた設計ができるエンジニア」は今、ものすごく求められています。課題へのチャレンジを通じて、技術、価値、インパクト、ビジネス、エンジニアとしての成長、これらがすべてつながることを強く感じます。
須藤:シンプルに「困っている人がいる。そこに予算もある。でも技術的ソリューションがない」という状況を、技術で解決できればみんなが幸せになります。逆につらいのは、新しい技術はあるのにニーズが見つからないという状況です。技術をどうお金に換えるのか、という課題に疲れてしまう。私たちが恵まれているのは、お金を払ってでも解決したい重要な技術課題があり、ビジネスチャンスがゴロゴロあるということです。本当に切実なお困りごとです。それを腕の立つエンジニア集団で解決していくというのはめちゃくちゃ面白い。本当にやりがいがあります。
エンジニアにとって一番大切なこと

目指している「エンジニアの楽園」はどういうものですか。
須藤:知的好奇心がベースになっているチームではないでしょうか。プロジェクトとして目に見える成果を追い求めつつ、その中で「新しい現象」「面白い構造」といったものがアウトプットとして出てくると、エンジニア個人としても面白いんですよ。 「なんかすごいものが出てきたぞ」って。これを見たさに仕事をやっている部分もあります。そうなると仕事を仕事と思わないというか、深い楽しみをもってやれるようになります。
谷道:プロジェクトによっては期間もシビアですし、技術的な要件も厳しいことがあります。取り組み方によっては苦しくなってしまうかもしれません。そうならないためには、そもそも「この現象を構造で制御出来たら面白いよね」とか、「このプロジェクトではこういう課題を解決したいんだよね」という根底のところを共有できている必要があります。切り出された小さなタスクだけを見るのではなく、みんなちゃんと技術を見ているということが、エンジニアの楽園としての空気を守れている1つの要因なのかなとは思います。
須藤:面白いことが起こっていると、みんなそこに興味が向くんですよね。そこからコミュニケーションが広がっていく。最近社内で流行っているパズルがあって、みんなちょっと行き詰まってリフレッシュしたい時にそれを解き始めたりとか。そういう中で、「そういえばあのプロジェクトここが気になっているんですけど何かアイデアないですかね」といった会話が自然に生まれたりします。コミュニケーションの壁がないのは、やはり共通の知的好奇心があって同じ方向を見て楽しめているからだと思います。
大切なのは"知的好奇心"と"キャッチアップ力"
最後にメッセージをお願いします。
谷道:エンジニアにとって大切な、「形を考えて実現させる」というクリエイティブを真摯に実践しようとしている会社です。そのための環境づくりや課題集めを本当に大事にしています。一緒にやっているエンジニアたちの活躍ぶりを見ると、前職では抑えられていた、その人が本来持つ能力やクリエイティビティを存分に発揮していることを強く感じます。そういう人たちの力を開放し、成長できる場であるために、フラットな組織であることを強く意識しています。人数が増えてもそこは死守したいです。
あと、実務的なことをいうと、こういうソフトウェアがあればいいのにと思えば社内ですぐ作ってしまいます。不思議なもので、例えばCADを触っている最中、自ずと思考がそのCADで出来る範囲に制約されてしまうということは普通に起きます。思考も設計もプログラミングも、ツールによって制約されることはストレスです。そういうことが少ないのも、エンジニアにとって魅力だと思います。
須藤:私たちは部署や領域が分かれてないので、「〇〇エンジニア」という肩書がありません。設計者としての仕事も、性能をシミュレーションして評価するという仕事も、そこからの改善もやります。目標値をこうしようといった企画にも踏み込みます。あらゆるエンジニアリングを体験できるわけです。こうやって全体を俯瞰してエンジニアリングできる環境は貴重で、やっていてものすごく面白いです。「全部できないといけないのか…」と怖くなってしまうかもしれませんが、大丈夫です。最初から全部できる人はほとんどいません。一緒に仕事をすればできるようになるので成長を楽しめると思います。
大切なことは二つだけです。新しいものに対する「知的好奇心」 と、実現に向けて地に足をつけて1つ1つ学んでいく真摯さ、いうなれば「キャッチアップ力」ですね。この2つがあれば、あとは何とでもなります。新しいことをやりたいと思っている人はぜひ話を聞きに来てほしいなと思っています。
